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中原中也-初期詩篇

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1名無しさん???v 2010/09/27 19:33 ?d?b3PC

中原中也作品集
初期詩篇

23名無しさん???v 2010/09/28 18:57 ?d?b3au

〜宿酔〜

朝、鈍い日が照つてて
風がある。
千の天使が
バスケットボールする。


私は目をつむる、
かなしい酔ひだ。
もう不用になつたストーヴが
白つぽく銹びてゐる。

朝、鈍い日が照つてて
風がある。
千の天使が
バスケットボールする。

22名無しさん???v 2010/09/28 18:57 ?d?b3au

〜秋の夜空〜

これはまあ、おにぎはしい、
みんなてんでなことをいふ
それでもつれぬみやびさよ
いづれ揃つて夫人たち。

下界は秋の夜といふに
上天界のにぎはしさ。

すべすべしてゐる床の上、
金のカンテラ点いてゐる。

小さな頭、長い裳裾(すそ)、
椅子は一つもないのです。
下界は秋の夜といふに
上天界のあかるさよ。

ほんのりあかるい上天界
遐き昔の影祭、
しづかなしづかな賑はしさ
上天界の夜の宴。
私は下界でみてゐたが、
知らないあひだに退散した。

21名無しさん???v 2010/09/28 18:56 ?d?b3au

〜春の思ひ出〜

摘み溜めしれんげの華を
夕餉(ゆふげ)に帰る時刻となれば
立迷ふ春の暮靄(ぼあい)の
土の上(へ)に叩きつけ

いまひとたびは未練で眺め
さりげなく手を拍きつつ
路の上を走りてくれば

(暮れのこる空よ!)

わが家へと入りてみれば
なごやかにうちまじりつつ
秋の日の夕陽の丘か炊煙か
われを暈めす(くるめす)もののあり

古き代の富みし館の
カドリールゆらゆるスカーツ
カドリールゆらゆるスカーツ
何時の日か絶えんとはするカドリール!

20名無しさん???v 2010/09/28 18:56 ?d?b3au

〜ためいき〜
河上徹太郎に

ためいきは夜の沼にゆき、
瘴気の中で瞬きをするであらう。
その瞬きは怨めしさうにながれながら、パチンと音を立てるだらう。
木々が若い学者仲間の、頸すぢのやうにであるだらう。

夜が明けたら地平線に、窓が開く(あく)だらう。
荷車を挽いた百姓が、町の方へ行くだらう。
ためいきはなほ深くして、
丘に響きあたる荷車の音のやうにあるだらう。

野原に突出た山ノ端の松が、私を看守って(みまもって)ゐるだらう。
それはあつさりしてても笑はない、叔父さんのやうでもあるだらう。
神様の気層の底の、魚を捕ってゐるやうだ。

窓が曇ったら、蝗螽(いなご)の瞳が、砂土の中に覗くだらう。
遠くに町が、石灰みたいだ。
ピョートル大帝の目玉が、雲の中で光つてゐる。

19名無しさん???v 2010/09/28 18:56 ?d?b3au

〜港市の秋〜

石崖に、朝陽が射して
秋空は美しいかぎり。
むかふに見える港は、
蝸牛(かたつむり)の角でもあるのか

町では人々煙管(きせる)の掃除。
甍(いらか)は伸びをし
空は割れる。
役人の休み日――どてら姿だ。

『今度生れたら・・・・・

海員が唄ふ。

『ぎーこたん、ばつたりしよ

狸姿々(たぬきばば)がうたふ。

港の市(まち)の秋の日は、
大人しい発狂。
私はその日人生に、
椅子を失くした。

18名無しさん???v 2010/09/28 18:55 ?d?b3au

〜夕照〜

丘々は、胸に手を当て
退けり。
落陽は、慈愛の色の
金のいろ。

原に草、
鄙唄(ひなうた)うたひ
山に樹々、
老いてつましき心ばせ。

かゝる折しも我ありぬ
小児に踏まれし
貝の肉。

かゝるをりしも剛直の、
さあれゆかしきあきらめよ
腕拱みながら歩み去る。

17名無しさん???v 2010/09/28 18:55 ?d?b3PC

〜夏の日の朝〜

青い空は動かない、
雲片(くもぎれ)一つあるでない。
夏の真昼の静かには
タールの光も清くなる。

夏の空には何かがある、
いぢらしく思はせる何かがある、
焦げて図太い向日葵が
田舎の駅には咲いてゐる。


上手に子供を育ててゆく、
母親に似て汽車の汽笛は鳴る。
山の近くを走る時。

山の近くを走りながら、
母親に似て汽車の汽笛は鳴る。
夏の真昼の暑い時。

16名無しさん???v 2010/09/28 18:55 ?d?b3au

〜悲しき朝〜

河瀬の音が山に来る、
春の光は、石のやうだ。
筧の水は、物語る
白髪の嫗(をうな)にも肖てる。

雲母の口して歌つたよ、
背ろに倒れ、歌つたよ、
心は涸れて皺枯れて、
巌(いはほ)の上の、綱渡り。


知られざる炎、空にゆき!

響の雨は、濡れ冠る!

・・・・・・・・・・

われかにかく手を招く・・・・・

15名無しさん???v 2010/09/28 18:55 ?d?b3au

〜逝く夏の歌〜

並木の梢が深く息を吸つて、
空は高く高く、それを見てゐた。
日の照る砂地に落ちてゐた硝子を、
歩み来た旅人は周章てて(あわてて)見付けた。

山の端は、澄んで澄んで、
金魚や娘の口の中を清くする。
飛んでくるあの飛行機には、
昨日私が昆虫の涙を塗つておゐた。

風はリボンを空に送り、
私は甞て(かつて)陥落した海のことを
その浪のことを語らうと思ふ。

騎兵聯隊や上肢の運動や、
下級官吏の赤靴のことや、
山沿いの道を乗手もなく行く
自転車のことを語らうと思ふ。

14名無しさん???v 2010/09/28 18:55 ?d?b3au

〜凄まじき黄昏〜

捲き起こる、風も物憂き頃ながら、
草は靡きぬ、我はみぬ、
遐き(とほき)昔の隼人等を。

銀紙色の竹槍の、
汀(みぎは)に沿ひて、つづきけり。
――雑魚の心を俟み(たのみ)つつ。

吹く風誘はず、地の上の

敷きある屍――
空、演壇に立ち上がる。

家々は、賢き陪臣、
ニコチンに、汚れたる歯を押匿す。

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