中原中也-初期詩篇
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11.[名無しさん] 〜深夜の想ひ〜
これは泡立つカルシウムの
乾きゆく
急速な――頑ぜない女の児の泣き声だ、
鞄屋の女房の夕(ゆふべ)の鼻汁だ。
林の黄昏は
擦れた母親。
虫の飛交ふ梢のあたり、
舐子(おしやぶり)のお道下た(おどけた)踊り。
波うつ毛の猟犬見えなく、
猟師は背骨を向ふに運ぶ。
森を控えた草地が
板になる!
黒き浜辺にマルガレエテが歩み寄する
ヴェールを風に千ゝにされながら。
彼女の肉(しし)は飛び込まねばならぬ、
厳しき(いかしき)のい父なる海に!
崖の上の彼女の上に
精霊が怪しげなる条(すぢ)を描く。
彼女の思ひ出は悲しい書斎の取片附け
彼女は直きに死なねばならぬ。 09/28 18:53 au
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